誰にも気づかれないマイナーチェンジ

気まぐれに旧店舗時代に愛用していたエプロンを引っ張り出して着てみたら、これが思いのほかハマって、この二、三日着用している。

アップデート?
リニューアル?

まあ、ともかくフレッシュな気分になるのである。

いつの間にやら、エプロン無しでは仕事は出来ないナイスミドルになってしまった。
エプロンをすることが僕の ‘普通’ になったのだ。
結婚前は、Tシャツの下に肌着なんて着てなかったが、今はそれ無しでは落ち着かなくなってしまった。
トイレで用を足すときも、大小問わずシットダウン。
それが ‘普通’ になった。

まあ何が言いたいかっつーと、自分にとっての ‘普通’ なんてものは、しょっちゅう変わる、いや変えられるってことだ。
で、この ‘普通’ が変わるってことが、結構楽しいし面白いし気持ちが良いってことがわかった。

これからの余生。
自分の中での ‘普通’ や、‘当たり前’ になっていることを、ちょっとだけ疑ってみようと思う。

しょうもない話になるが、今僕にとって当たり前となっている仕事時に “adidas campus” を履くっつーのも、ちょっと変えてみようかしらん。
絶好の候補があるのだ。
そんなの履き替えても、誰も何も気づかないだろうけども、だからこそ尊いのだ。

自分だけが知っているマイナーチェンジ。
そういうのを爆発的にさりげなくやっていきたい。
もちろん改悪ではなく改善だ。
五十過ぎてからの人生、そういう楽しみ方があっても良いだろう。
ヤァマン。

わかってもらえるさ

ぼんやりネットニュースを眺めていたら、こんなことが書いてあった。

「Z世代」と呼ばれる今の20代の若者たちは「怒るという感情を持つ人自体がそもそもNG」という傾向が強い。
怒るよりは、改善策を考えたほうが生産的なのに、それでも怒るような人は空気が読めないウツボ野郎だと認定されるのだそうだ。

それから、その世代はSNSで自分の存在を「いいね!」と褒められるのが当たり前になっているから、否定されると「何この人、怖い!バカ!」となると書いてあった。

こりゃ確実に自分は “怖い人” 確定だなぁとしみじみしつつ、でもその気持ちわからなくもないぜと床屋のオッサンは思ったんだった。

私も怒る人怖いし、怒られるの嫌いだもの。
もちろん納得出来る怒りをぶつけられるのは大丈夫。
ちゃんと理解し受け止め反省する。
ただよくわかんない怒りは怖い。
どうした?アーハン?
となる。
でも、それは普通でしょ?

もしZ世代とやらの方々が、どんな怒れる人に対しても「コワッ!」となるのなら、オッサンはそっちの方がよっぽど怖いぜ。

基本「わかってもらえるさ!」の精神でのほほんと生きて来たので、それが通じない世の中になりつつあるのなら、そっと降りよう。

でも通じるよね。
芸術ってそのためにあるんでしょ?
そのために爆発してるんでしょ?

なんか書いててよくわからなくなってきたから、一時撤退する。

さてと、UNDERWORLD でも聴きながら草むしりするかな。

股旅。 

これもまた私の仕事

今季もまたTシャツを作っているのです。

いろいろアイデアはあったのですが、7年程前にマイキー・ドレッド(レゲエ歌手でありプロデューサー)をモチーフにして作ったのを2021年バージョンで復刻させようってことになりまして。

グラフィックはそのままに、屋号である『DOODLIN’』の部分を『BARBERS』に変えてお届けしようかと。

DOODLIN’ に限定せず、床屋を愛し床屋に集まる人々、それはスタッフだけでなくお客さんたちも含めての総称として“BARBERS” ってのはどうだろうか? イイね!
と相成ったわけです。

発案者は、毎回僕のイメージをそれ以上に具現化してくれているデザイナーの長友くん。

なんかこう……

今はかなりコロナ野郎のせいで窮屈な状況下なわけで、そんな世の中だからこそ、少しでも垣根を取り払って前向きに考えられることって重要なんジャマイカってことで、“BARBERS” になったわけです。
うん、とても良いですな。

背面には今年も引き続きこれですかねってことで “Go Slowly” と入れようと思います。
ついウッカリ “Hurry Up!” となってしまいがちになって来てますからね。

使用するボディも決まり、これからカラーバリエーション選択。
良いものが出来そうな気配がムンムシ漂っていますよ。
BARBERS の皆さん、お楽しみに。

こんなこと考えているのが、たまらなく楽しいわけです。
でも、これもまた れっきとした床屋の仕事ですから。

新しく作る mix CD 『reggae beam & funk bomb vol.2』の選曲をするのも床屋の仕事。

庭の草むしりも、この日記を書くのも、全部床屋の仕事なんです。
多分ですけども。

それでは股旅。

普通という奇跡

とある漫画の帯に書かれた『普通という奇跡』という言葉になんだか胸を打たれまして。

何がどう胸を打ったのか、全く自己分析出来てないのですが、結論としては「やっぱイイよね、普通」ってことなんだなぁとしみじみしているのです。

先ほど、来てくださったお客さんが、こんな日はこんな音楽はいかがでしょうかと デヴィッド・ボウイの「ジギー・スターダスト」のレコードを持ってきてくれまして。(しかもUKオリジナル盤)

いつもとは逆のお客さんが選曲してくれるってパターンも良いなと思ったし、このアルバムがまた今日の天気やら気分にもジャストフィットだったのも最高でした。

なんかこう、こういう時間も店がゆっくり作り上げてきた尊い時間なんだよな……なんてしみじみしちゃいましたよ。

そのお客さんが帰り際に「スッキリしました。ありがとうございます!」と言ってくれたのも、ただ物理的に髪が整えられたってことだけじゃなく、ハート&ソウルもスッキリしたってことなんだろうなと手前勝手に、よりポジティブに受け止めさせていただきました。 

こういう御言葉を頂戴出来るって、ステキな御褒美だよなと思うのです。
こういう喜びを多分「普通という奇跡」って言うんだろう、いやそうに違いないな、うん多分きっとそうです。

そういうことだったのだ

先日、取材に来てくださったライターさんに屋号に “BARBER SHOP” と入れた理由を訊かれました。

当店が開店した十七年前には、もちろん昨今のようなバーバーさんブームみたいなのは その予兆すらなかったわけで、いやむしろ正直ちょっと『床屋=ダサい、古い』的な空気もあった状況だのにナゼ、歯を食いしばりキミは行くのか、そんなにしてまで……

ってところがこの質問の真意だったのだと思います。僕はそれは決意表明だったのだ とカッコツケて答えました。
老若男女問わずウェルカムとするより特化することによって圧倒的な個性が出せるんじゃないかと、そこに自分がやるからこその意味が見つかるんじゃないかと……

なんて鼻息荒かったわけです。
恥ずかしながら。

とまぁ、イキってそう言いましたが実際「理髪店」とか「理容室」を屋号に入れるほどの覚悟はなかっただけなんですよね。
得意のちょうど良い抜け方を狙ったわけです。
バーバーショップってのは、ただの英語なんです。つまり英語でカッコつけたわけですよ。

ところがですね。
今読んでる近田春夫さんの自伝にこんなことが書いてあったのを発見して僕の中で風向きが変わったんです。

“ランDMC の「King of Rock」にしても、LL・クール・J の「Rock the Bells」にしても、時代遅れの代物という印象があったロックという言葉をわざわざ別の文脈で蘇らせることによって、価値観をひっくり返す意図があったと思うんだ。
ランDMC のある意味象徴でもある アディダス も当時 ナイキ の方がカッコいいとされてた中で、スポーツ用品店の外に積まれてた、半分日に焼けたような商品にあえて目をつけたんだと思う……”

こ、これだっ!
ってなりましたよ。
うん、多分、これです。

なのでこれからは「ナゼ屋号にBARBERSHOPを?」と訊かれたら「説明しよう!それはね……ランDMCがね……」と長々と語ろうと思います。

つまり DOODLIN’ BARBER SHOP はヒップホップ なんだってことなんです。笑 

巷のバーバーさんムーブメントは、遠くで燦然と輝く花火のようですが、うちのお客さんは、DOODLIN’ が床屋なんだってところを気に入ってくれてると思っていますので。

とまぁ冗談はさておき、DOODLIN’ BARBER SHOP を今後ともよろしくお願いいたします。

店主 高崎哲平 拝