その「遊び」に用がある

雑誌の『BRUTUS』や『POPEYE』が、本や音楽の特集号だったらもれなく読むようにはしている。

その毎度毎度、読んだことない本、聴いたことのない音ばかりがたくさん掲載されているのを見るのが、なんだか痛快なのである。

それと同時に、知ってはいるけど読んでない、聴いてないレベルではなく、その存在すらも知らなかった作品たちがズラリと載っているのを眺めて、自分の見識の狭量さを痛感するのも、また楽しかったりするから面白い。

で、その見たこともないし聴いたこともない作品の中から、自分の気まぐれや思いつきで、一つか二つ手に取る。で、これが大体「当たり」であることが多くて、その自分の勘の良さに「オレやるな〜」と酔っぱらうのだ。これがまた楽しい。

若い頃は、知らないことに恥ずかしさや焦りを感じたりもしたが、今となっては、あれのほとんどを知っている人がいたら、それちょっと「怖い人」だよ!と思えるようになった。

全部知らなくてもいい。狭くて深く、そこをひたすら「掘る」。それがいいんじゃない!と思えるように、いつの間にかなっていたんだった。めでたしめでたしである。

で、私は今 “VIDEOTAPEMUSIC” というアーティストにほとほと夢中なのだが、そのアルバムのアナログ盤のほとんどが現在は入手が難しい状況になってて、こうなると知るのが遅かった自分がホント憎い。
「何ボーッとしてたんだっ!」
と人知れず己に喝を入れている。

先日もお客さんに「テッペーさん、きっと好きだと思いますよ」と “Wool & The Pants” という和製ファンクバンドを教えてもらい、聴いてみたらドンズバ私のツボに入りまくりだったのだが、アナログ盤はどこも完全完売。己のアンテナの低さを呪ったのである。

痛快に感じたり、痛感したり、自分に酔っ払ったり、自分を憎んだり、呪ったりといろいろとアンバランスに忙しいエブリデイではあるが、なんかこう、こういうフラフラとしている感じでいいんじゃないかと思っている。

クルマのハンドルでいう「遊び」みたいな?そういうの大切だよな〜と感じることが多くなった。かといって、適当でいいってことではなく。

股旅。

ON THE AIR

今日はなんだか、朝から擬態について考えているのです。いや違うな。擬態については、思春期の頃ぐらいからずっと考えて続けているかもしれません。

擬態、それは動物が、攻撃や自衛などのために、からだの色や形などを、周囲の物や植物・動物に似せること。

私はこれが不思議でならなくてですね。カメレオンや昆虫などが
「う〜む、どうにか敵に見つからないように出来ないかな。そうだ!この景色に溶け込むようにオレのボディの色や形を変えてしまえばイイんだ!それだっ!」
と思案し、自分の意思で自らのボディを変色させたり変形させた……って物凄いことですよね。超能力どころの騒ぎじゃないですよ。

だからね。私は擬態について考え始めたら、最終的に行き着くのは「神」の存在なんですよね。

神様が「こいつ結構頑張っているから、もうちょっと長生きさせてやりたいな。よっしゃチチンプイプイ!」って、魔法や呪文で色形を変えてあげたんじゃないかと。

そう考えると腑に落ちるんですよね。ダメですか?

さて。話は圧倒的に変わりますが、近頃我が DOODLIN’ BARBER SHOP でヘビーローテーション中のこのアルバム。VIDEOTAPEMUSIC の『ON THE AIR』。

五年前の移転時から「いつの時代なのか、どこの国なのかわからないような……そんな店にしたい」なんて隠れコンセプトを自分の中で大切に育んで来たのですが、そのコンセプトを見事に体現したアルバムにやっと会えた……なんて思いを満たしてくれたのです。

最初から最後まで最高ですね。まさにうちの店で流れてて欲しい音がそこにありました。でまた、このアートワークがイイ。あの坂本慎太郎さんが描いたそうです。でね。ほら、うちの店がさりげなく描かれているじゃないですか。狭山丘陵と鉄塔と西武園の観覧車も描かれているのです。

はたから見たら痛々しい思い込みかも知れませんが、イイじゃないですか。そう思い込んでも。このアルバムにはね、「そう思いこんでもイイよ」って優しさが内包されているのですよ。小さいことは気にすんなってね。

気になる方は御来店時にリクエストしてください。もちろんレコードで流しますので。私と一緒にトリップしましょう。

股旅。

これはたまらん

うちのバーバー椅子の張り替えをしてくれた RAZZLE DAZZLE の大塚さんが、DOODLIN’ BARBER SHOP オリジナル仕様のビートルカエルを作ってくれたのです。

カラーとカエルの背中に入れられる文字を決められるとのことで、ネイビーに白字で “High Voltage Barber” それと屋号を入れてくだされば、あとはお任せしますと伝えて出来上がってきたのがコレ。

か、かわいい……

どうです?この脱力感。たまらないですな、この佇まい。目は “Volkswagen” を模したものになっていて唇がバンパーになっているわけです。ネイビーもイイ塩梅の色加減。素晴らしい仕事ですな。で、これが貯金箱ってところがミソ。ただの置き物じゃあないってところが粋じゃないですか。

良いものを戴きました。大塚さん、ありがとうございます。

そんな流れを感じるのです

先週末に納品された「Go Slowly」ティーシャーツを昨日今日とせっせと梱包し、今さっき遠方よりご注文いただいた方々に発送してきました。今度はお買い上げありがとうございました。近日中には届くと思いますので、もうしばしお待ちを。

この梱包&発送作業。私のようなボンクラにとっては、これがなかなかの修行でありまして。送り主の住所を書く際に「埼玉県」を省略したくてしょうがなくなるのです。たかだか「埼玉県」を書くのが面倒なのです。

届け先の住所は、全国いろいろなので飽きないんですよ。その住所を書きながら「どんなところなのかな〜」なんつって想像するのが楽しかったりするので。

でもね。だいぶ前になりますが、光風&Green Mssive の『地下街の人びと』というアルバムを通販で注文しましたら、送られてきたLPレコードにバンドフロントマンである光風さんの直筆メッセージが添えられていたんですよ。それもちゃんと私宛のものが。

つまり、光風さんはレコードを注文してくれた人たち皆に直筆メッセージを送っているわけなんですよ。確実に誰かに「やれ」と言われてやったものじゃないでしょうし、光風さん自らの意思でやったんだろうし。

だから、私の心は揺さぶられまくったわけです。そりゃ、その歌声も歌詞に込められたメッセージも、より深く私のハート&ソウルに突き刺さるわけですよ。なんかこうね。その表現者の姿勢が見えるじゃないですか。

でもね。そんなに感激したくせに、私は同じようにやらないからしょうもない。手書きのメッセージは以前から添えてはいますが、光風さんほどの熱量はないですもの。

見習わなきゃな!とは思っています。この新型コロナ事変の渦中。より、こういう志が求められている気がします。そういう世の中になっている気がします。

これは私の希望を多分に含んでいるのですが、これからは真心とか情熱とか思いやりとか義理とか人情とか、そういうココ最近蔑ろ(ないがしろ)にされてた節があるものたちが、もっともっと大切にされる世の中になるんじゃないかな〜とぼんやり鼻くそほじりながら考えてます。

イイ音楽とか、イイ書物とか、イイ映画とか、そういうのもきっとたくさん生まれますよ。

楽しみにしましょう。

股旅。

わたしのしごと

今日は朝からせっせと MIX CD を作っているのです。テーマは「Go Slowly」で選曲しました。そう、もう直ぐ納品される DOODLIN’ BARBER SHOP オリジナルティーシャーツのフロントに施したメッセージと同じです。

なんだか「今」に相応しい、うちの店らしい、私らしい文言はないかな……と思案して辿り着きました。そのテーマに沿って、今回は邦楽だけで選曲しました。いつも洋楽が大半を占めるのですが、なんだかそうなると少し「カッコつけてる感」が出ちゃって、日頃から自分のそういう部分のことを「ケッ!」って思うところがあって、カッコつけ感を抜いたら、イイ抜け具合の空気感に仕上がりました。我ながら「イイぜこれ!」と思いました。

小手指にあるコーヒーショップ『lit』さんのご協力をいただき、オリジナルドリップバッグも作りました。シンプルにホワイトバックに、長友くんがデザインしてくれたロゴのみ。これまた、我ながら「イイぜ!」と思いました。長友くん、いつもありがとう!

MIX CD をそのまま裸でお渡しするってのも味気ないので、チチンプイプイとジャケットデザインもしてみました。これは正直、我ながら「微妙だぜ!」と思いました。なんかチープなんですよね。
「そのチープさがイイんじゃない!」
と開き直りたいところですが、そこまで図々しくはなれないようです。やはりそこはど素人です。

酷暑ピーク時にエアコンの効きが悪くなるので、先日シーリングファンを取り付けました。これが結構有効だったのではないかと自負しているのですが、いざ本域の暑さになったら……と想像したら冷汗がジンワリ出てきたので、室外機カバーも取り付けることにしました。効果があることを願うばかりです。
これまた、なかなかイイのを選んだぜと自負しております。

さて、つらつらとしょうもないことを書き綴ってきましたが、思えばこれらの全ても「私の仕事」だなと思ったのです。髪を切るだけじゃないんですね。その空気を作ることも仕事なのです。まあこれは一人で店をやっている醍醐味ですね。全部仕事。あれもこれもどれもそれも、全部仕事。痛快!

息子が可愛がっているカブトムシの世話もカナヘビの世話も仕事。雑草抜くのも仕事。店で流すレコードを選ぶのも仕事。掃除も仕事。着る服を選ぶのも仕事。こうなってくると生活そのものが仕事な気がしてきました。

ところで『仕事』ってなんでしたっけ?