小さな芸術家

「ヘッドフォンに色塗っていい?」

息子にそう訊かれたとき、正直最初は「え……出来たらやらないで欲しいんだけど……」と思ったのですが、懇願するような息子の眼差しビームを浴び、まぁ別にいいかと思い直して許可することにしたのでした。

やった〜!

と息子は、はしゃぎ、躊躇なく下書きなしでサササと塗り始めるのをハラハラ眺めていたのですが、

あれれ?これ結構良いかも!

と風向きが変わり、出来上がったのを見たら、最初は気が進まなかった自分の狭量さが情けなくなったのでした。
だって凄く良いですもの。
なんかこう、気持ちがパッと明るくなったんですもの。

私の好きなアニメ(というか絵本でもある)の『おべとも学園』の登場人物である “ぼうしくん” ってキャラクターがおりまして。

“ぼうしくん” は飄々としてて無口で、でも絵がとても上手でしてね。
友だちが落ち込んでいるときや、怒っているときに、サササと絵を描いて、場を和ませ、人を慰め、笑顔を引き出し、なんかちょっと優しい気持ちにさせるんです。

私は、それこそが “芸術家” の役割なんだろうな〜と、ぼんやり “ぼうしくん” から学んだんです。

で、今回の息子のヘッドフォンアレンジを見て、私は息子と “ぼうしくん” を照らし合わせたのでした。

こういうこと、これからも沢山して欲しいな。
床屋のオッサンは、そんなワガママな思いを密かに抱いたのでした。

股旅。

今日もしみじみ

先月末、ジャズ・オルガン奏者のジョーイ・デフランセスコが死んでしまった。
51歳、私と同い年の天才オルガニストの早逝。
死因は発表されてない。

ということで、彼が昨年リリースされたアルバム「More Music」を聴いている。
良い。

で、ジャケットがまた良い味を醸し出している。
好きだ。

これはもういつものアレをやらないとな!

と私のボディーに合わせてみた。
タイトル「More Music」と私の胸の「Go Slowly」が、なんだかリンクする。
51歳と云えば、ジャズ・ピアニストのビル・エヴァンスが亡くなったのも、この年齢だったな。
なんだか、しみじみしちゃうぜ。

同じく51歳の私は相変わらず、プラモデルを作っている。
口を開けば、プラモデルの話ばかり出てきちゃいそうで、だから気をつけている。
私にとっては猛烈に面白い話なのだが、プラモデルに興味がない人にとってはチンプンカンプンなどうでもいい話だからだ。

でも、なんだかそういう話って、とても意味のある深い話のような気がする。
誰かにとっての宝物が、誰かにとってはただのガラクタになる。
私は、そういう物事に “光” を感じる。
そこに “面白味” を感じるのだ。

「で、だからどうなの?」

そんな話こそが、今とても私に染み込んで来るのである。

股旅。

甚だどうでも良い話

工作用に “プラ板” が欲しいんだ!

と息子が絶叫するので、模型店に買いに行ったら、タミヤ製のプラ板があってテンションが上がりまくったのでした。

私はタミヤのロゴが大好きでして。
あの二つの星を見ただけで、なんとも言えぬ充足感が得られるのです。
多分世界で一番好きなロゴなんです。

信頼と実績の二つ星。
タミヤ製にハズレなし。
世界のTAMIYA。
この思いを子どもの頃からずっと変わらず持ち続けております。

あ、そうだ!

と思い立ち、アメリカ海軍の航空機V-22(通称 オスプレイ)のキットを探すことにしました。
いろいろと言われているオスプレイではありますが、あのヘンテコな形状にワクワクしてしまうナイスミドル坊やって少なくないと思うんですよ。
キミもそうだろ?

横田基地近くのホームセンターに行ったとき、あの特徴的な飛行音 “ブバラバラバラバ” を響かせて垂直上昇するオスプレイを見たときは痺れました。
これが問答無用にカッコ良かったんです。
これはもう仕方ないんです。
ごめんなさい。 

で愛しのタミヤ製のオスプレイのキットはないかしらと探すがない。
そりゃあるはずがない。
だって厚顔無恥のオッチャンは飛行機のキットが並べられた棚を探していたんですもの。

そうなんです。
私がようやく見つけ出したHasegawa 製のオスプレイのキットはヘリコプターのコーナーにあったんですもの。
(タミヤから出てはいるのですが、タミヤが代理で販売している海外メーカーのもので、タミヤ的クオリティには程遠いキットらしいので)

興味ない人にとっては、甚だどうでもよい、しょうもない話でしょうけども、私的には「オスプレイってやっぱりヘリなんだ!」って答えをいただいたような気持ちにさせてくれる胸熱要素だったのでした。

そんなわけで、年末までにゆっくりこのオスプレイを作っていこうと思います。
焦りは禁物。
ゆっくりコツコツ作り上げたいですね。

プラモデルを作っているときの BGM は、もっぱらレゲエですね。
なんか緩い空気感がプラモ制作じの気分に妙にフィットするんですよ。
これまた、どうでも良い話ですが。

神は何処に宿るのだろうか。

近頃、ちょくちょくプラモデルを作っている。
小学四年くらいから小学校を卒業するまで夢中になっていた趣味の復活である。

随分ドップリ浸かっていた印象なのだが、たかだか二、三年だったとはな。
うむ、それだけあの年頃ってのは濃厚濃密な時を過ごしているということなのだろうな。
今だったら十四、五年続けている趣味と同格くらいなのではないかと感じる。

中学生になり勉強が本格化し、部活も始めると、プラモデルを作っているどころではなくなってしまったんだった。
思い返せば、あのときいろんなことを手放してしまったな。
プラモデルをやめ、プロレスを観るのをやめ、ガンダムの新作にも目もくれず、アニメージュやホビージャパン、コロコロコミック、コミックボンボンの購読もやめてしまったんだった。

私があの道をあのままひた走り続けていたら……恐らくモンスター級のオタクになっていただろう。
想像するとゾッとするが、それと同時にそれもまたアリだったんじゃ?とも思う。

で、今。
四十年ぶりにプラモデル制作に精を出しているのだが、今の自分の仕事にも通ずることが沢山あるよな〜と感じている。
私の仕事はプラモデル作りに似ているところがある。

プラモデルは組立説明書通りに作れば、とりあえずは形になる。
髪を切ることも同じで、マニュアル通りにすれば、とりあえずは形になる。

でも、そこで終わらせてはいけない。
プラモデルだったら、塗装してディテールアップして、改造して、ウェザリングして、それで自分の作品になる。
ヘアカットも然りだ。
自分なりの工夫やアイディアを加えて、初めて自分がカットする意味が生じると思うのだ。

プラモデル制作で気をつけていることがある。
見えないであろうところから丁寧に正確に作るということだ。
そこを手を抜くと、完成時にイマイチ締まらなくなる。
なんだかボヤーンとしちゃうのだ。

これが見えないであろうところも、きちんと作ると、あら不思議。
なんだかギュッとソリッドに引き締まるのよね。
全然見えないところであればあるほどそうなるのだ。

ヘアカットも同じである。
お客さんが気にしないところ、お客さんが見えないところこそ、ちゃんとやらなければならないのだ。
なんつって。

そんなわけで、プラモデル制作ってのはとっても勉強になるのである。
人生においても、生活においても繋がる大切な何かを学べるのだ。

イイぜ、プラモ作り

🫡

夏のぬけがら

先日、せっせと裏庭の草刈りをしてたら大きなヒキガエルと遭遇しまして。
これは息子に見せてやらねばと捕獲して見せたら案の定大興奮。

「飼いたい!飼いたい!」

とシャウトし始めたのですが、ちょっと落ち着きなさい息子よ。
うちには今、ヒキガエルを飼育出来るようなケースはないじゃないか。これはもう逃してあげようよと言うと

「大丈夫!クワガタを入れてる飼育ケースを使えばいい!」

などと言い出す始末。
夏の始めに捕まえたノコギリクワガタとコクワガタ十数匹をさっさと逃し、ヒキガエルを迎え入れる準備を始めたのでした。
(正直、私の気持ちは「え〜ウソ〜!」である。
実は結構私が可愛がっていたクワガタちゃんたちだったからです。)

しかし、息子は今まで生き物の世話をちゃんとしたことなどありません。
かつての私と同じくハンティングは大好きだが、ブリーディングはノーサンキューな少年なのである。
ちゃんと面倒見られないだろうし、二、三日観察して、そしたら裏庭に逃してあげよう。
きっと彼は裏庭のヌシだからさ……。
息子は渋々ではあるが、この私の提案を受け入れてくれたのでした。

とは言っても、いざ逃す約束の日になったら、どうせ「イヤダイヤダ!」とゴネるのだろうなと思っていたのですが、超意外に呆気なく逃したのでした。
ヒキガエルのカエちゃん(息子が命名)は、息子が与えたバッタたちを一匹も食べていませんでした。
ダンゴムシやコオロギが良いらしいと調べてはいた息子ですが、暑さや雨を理由に捕獲もしてませんでした。
息子はきっと自分でも「これは飼うのは難しそうだぞ!」と痛感していたのでしょう。

この “痛感する” ってことが物凄い進歩だと思うのです。

そして最後に残ったのはカブトムシ連中。
毎年毎年、飼育箱の中で生涯を終える姿を見ていて、実は少し可哀想だよな〜と思っていた(コクワガタは越冬します)ので、息子に「カブトムシも逃していい?」と訊いてみたら、ちょっと考え込んだ後「うん、いいよ」と言ってくれたのでした。

ヒキガエルと一緒に昆虫たちも全て逃した この数日間。
「夏の終わり」と「息子の成長」を感じたのでした。
朝の空気感と風の匂いも、秋のそれに変わりつつありますね。

息子は今日から二学期開始。
私と妻さんにとっては、静かな日常の再開です。

さてと。晩夏の定番名作アルバムである真島昌利先輩の「夏のぬけがら」でも流しましょうかね。

それでは股旅。