虫採奇譚

誰もあまり興味が無いかもしれないが虫採りの話をしようと思う。

 

 

まず、そのあてる漢字なのだが「虫採り」なのか「虫捕り」なのかで、ずっと迷っている。

どちらも良い勝負でいい塩梅なのだ。
だが、ここは「虫採り」で行くとしよう。
なんだかそんな気分だからだ。
そんな甚だどうでも良い話でスタートさせてもらう。
今朝も、五時に起きてハンティングに出かけた。
狙うはノコギリクワガタだ。
今年もまた正直カブトムシはもうノーサンキューな状態に突入している。
そのぐらい、ビックリするぐらい、カブトムシは採れてしまうのだ。
きっと愚鈍だからだろう。
クワガタはそうは行かない。

懐中電灯でその姿を照らし出したら、すぐに捕獲しなくてはいけない。
そこから目を離してしまったら、もうゲームオーバーなのだ。
あいつらは、その瞬間にストーンと樹から落下し、落ち葉の中に素早く身を隠してしまうのだ。
ブイーンと飛んで逃げたりはしない。
やつらはダイブして逃げるのだ。

 

 

 

 

 

ここで賢いやり方として、事前に目標となる樹の下に新聞紙などを敷くという作戦がある。

さすれば、落ち葉の中に逃げることは出来ないからね。
だが、なんだかそういうことはしたく無い私がいる。
トラップを仕掛けるのも、どうにも気が進まない。
雑木林に侵入し、匂いと音と気配を察知し、やつらを捕獲する。
そこにこそ醍醐味があると思うのだ。
誰も褒めてくれないし、誰も認めてくれない、密かなこだわりなのである。
今回は、長袖長ズボン、園芸用長靴、帽子、首回りを保護するタオルを着用する完全武装で臨んだ。
下草が刈られていない雑木林にアタックし、新たなる樹液あふれまくりポイントを見つけるためだ。
しかし、すぐに凹んだ。
何しろ暑い。
そして、容赦無く顔にまとわりつく蜘蛛の巣。
そして、グニャ、ムニャと足裏に伝わる謎の感触の気色悪さ。
そして、今年やけに多いスズメバチの猛追。
「俺はいったい何をやっているんだ?いい年齢のおっさんが……」
と哀しき自問自答しまくりである。
そして、自分でも気づいていた。
これはもう息子のための「虫採り」では無いことを。
確実にそれはもう自分のためになっていることを。
どうやら巷では、カブトムシおじさん的な不審者情報が多く出ているそうだ。
「カブトムシ見たい?」
と児童に声をかける中年男性……そんな事案が頻発しているのだそうだ。
一応言っておくが私では無い。
しかし、先日一人で虫採りに出かけた際、目の前に多くの甲虫たちがいるにも関わらず、スズメバチもまた多くいたせいで、採るのを断念し「悔しいな〜参ったな〜」と満面の笑顔で雑木林から出てきたところを、散歩中の親子に見られてしまった。
もしかしたら、不審者情報として報告されてしまったかもしんまい。
「明日は四時に起きて行くよ!」
息子はそうシャウトして寝床に入った。
うむ、その時間ならクワガタもきっと採れることだろう。
明日は採るぜ!
しょうもない話で、どうもすみません。

思えば遠くへ来たもんだ

今朝ふと思ったこと。

いつの間にやら、この髪切り稼業に従事して二十五年近く経っていました。

人生の半分を床屋のオッサンとして過ごしたってことになりますか。
思えば遠くへ来たもんです。
二十年以上のお付き合いになるお客さんも少なくない。
出会った当時、中高生だった男子が、今やいっぱしの大人になっている。
初めての恋愛に右往左往していた少年が、幾人もの子持ちになっている。
入学式や卒業式や成人式、入社式に結婚式に、お宮参りやら、なんやらかんやら。
人生の要所要所肝心なところで、髪を切らせてもらいました。
「このときの髪、テッペーさんに切ってもらったんだよね……」
だなんて、皆さんが写真を見ながら思い出すことはないだろうけども、手前勝手に自己満足させてもらっています。
ありがたし。
これまでの二十五年の速さを考えると、これからの二十五年はさらにスピードアップするのだろう。
それ即ち、あっちゅう間に七十歳越えってことか。
ま、もちろんそれまで無事生きていられたらの話ではありますが。

そのイイ仕事に用がある

今日は、オープン前にちちんぷいぷいと Local community salon Revel さんにカットしに行ってきました。
図々しくも、『マッドマックス 怒りのデス・ロード』のトム・ハーディーの写真を見せ「こんな感じでお願いします!」などという暴挙に近いふざけた寝言オーダーにも店主の岡本さんは快く応じてくれ、しかもイイ塩梅に仕上げてくださいました。
ありがとうございます!
画像は、参考にしていただいたトム・ハーディーの写真の鼻から下と、私の鼻から上をドッキングさせてものでして。
なかなかどうして、なかなかイイハマり具合じゃないですかね。
四十八歳になった今もちゃんと大真面目にふざけられていられることに感謝。
ベリーハッピー。
Local community salon Revel さんの仕事場と仕事っぷりには大いに影響を受けさせてもらいました。
やはり外に出るとそこに学びがありますね。
勉強大事!
近頃の私は、NHKで放送されているアニメ『機動戦士ガンダム THE ORIGIN 前夜 赤い彗星』にやられっぱなしでして。
ここまで原作を忠実に、しかもさらにアニメーションとして上乗せさせた完成度に痺れっぱなしでして。
これがもう最高なんですよ。
素晴らしい仕事だと思います。
声優さんも、ギレン総帥だけはオリジナルの銀河万丈さんが演じてて、その辺もGOOD。
物語も今後の展開も全て承知しながらも、今後が楽しみなのです。
それと今読んでいるのは『続 横道世之介』(吉田修一著)で、これまた最高。
読んでいると、あの時あの頃、私がボンクラ真っ盛りだった90年代初頭のあの雰囲気が見事蘇るのです。
作者の吉田修一さんが、まるで私の隣にいたかのように感じてしまうぐらいに、事細かに、あの頃のボンクラの日常を描いてくれていると思います。
このテンションを続編でも維持できているところは、ある意味『マッドマックス 怒りのデス・ロード』と一緒かもしれないですね。
これまたイイ仕事だと思います。
せっかくイイ仕事に囲まれているのだから、自分の仕事も良いものへと昇華させていきたいですね。
頑張りますよ。
股旅。

キミョウな床屋

数年に一度、ドンずばりと私のツボにハマる音楽がやって来てくれまして。

つい先日、それが来たのです。

たまたま、ホント偶然が重なりまくって、それがやって来てくれたのでした。
それは、Perfect Yanai Pluck というグループの『キミョウな休暇』というアルバムでして。
邦楽なんです。
全曲インストなんです。
そこに広がる音世界が、もうたまらなく心地良くてですね。
夏休み的な空気が満載でしてね。
タイトルもまた、なんだかこう星新一的世界観とリンクしている感じで、もちろんその音も繋がっている感じで、いやはやもう最高なわけです。
もうね。
ずっと聴いてますよ。
飽きずに。
ずっとずっと。
この世界観。
自分の店にも応用できないかな……と思案してみました。
『キミョウな床屋』
良いですね。
目指したい領域ですね。
そういえば移転当初、「いつの時代なのか、何処の国なのかわからないような、そんな店にしたい……」だなんて寝言言ってましたね、自分。
言うならば、その寝言を音にしたような感じって言えば良い感じですかね。
うん、全然わからないですよね。
これまたたまたまなんですかね。
サッポロビールの『大人エレベーター』の細野晴臣さんの映像を観まして。
ナビゲーターの妻夫木くんから質問攻めにされるのですが、それらをことごとく華麗にのらりくらりとしつつも生きた言葉で粋に返す細野晴臣さんがとっても眩しくてですね。
いやあ、良いもの観させてもらったと思いました。
咄嗟に出て来る言葉って、知性とか教養とか、果ては人間性まで滲み出ちゃうものですよね。
細野晴臣さんみたいに粋な言葉を選べたらなと思います。
そのためにすべきこと……
それが何となくわかって来ましたね。
よかったです。
歳を重ねて良かったですよ、ホントに。
さてと。
知性と教養をさりげなく醸し出すキミョウな床屋を目指して、今日も学びましょうかね。
股旅。

あくまでも理想は高く!

ここ最近、息子と風呂に入る度に息子がこう言うのです。
「どうしてお父さんは、そんなにダラシのない身体なんだ?どうしてそんなにデヴなんだ?」
と嘆くのです。
これはもう近頃息子が夢中になって観ているアベンジャーズシリーズのせいです。
あんな鍛え上げられたボディを持っている人間なんて、ほんの一握りだっつー圧倒的現実を息子は知らんのです。
悪者をバッシバシやっつけられるようなプロレスラーみたいな身体になって!
とお願いされても、私もすでに四十路後半。
これはなかなかどうして、なかなか難しい。
私もかつて、タイラー・ダーデンのようなボディに憧れたものです。
タイラー・ダーデン、そう、映画『ファイトクラブ』でブラッド・ピットが演じたあのカリスマです。
そんなわけで、そのタイラー・ダーデンのボディと私の愚顔を合わせてみたのですが、物の見事に気持ち悪い仕上がりになりました。
息子よ……
父に、こんな身体になって欲しいのか?
こんな床屋のおやじさん、なかなかいないぜ?
でも、ここまでではないにせよ、ちょっとは鍛えないといかんなと思ってはいる今日この頃であります。